ハウスボーラーの輩をうまく定着させるには

ボウリングの日らしくボウリングのテーマを。
ジュニア層ではなく、またジュニア時代の延長上でボウリングをやっていない層に対するボウリング場のサービスってとことん弱いよなといつも思う。基本的にJBCや部活でやっているジュニアと引退して暇を持て余している老人にしか目が行っていないという印象。
それ以外の層を長期的に取り込んで行こうという企画をちゃんとやっているセンターってあまり見たことがない。

ジュニア選手の最大のパトロンは親である

いうまでもなくジュニア選手のパトロンは親である。親の金で飯を食い、親の送迎付きで、親の金でボウリングをやるのはジュニア選手の特権である。ジュニア選手の育成には親の力なくしてはあり得ないのはボウリングに限らずどのスポーツでも言えることだと思う。
ボウリングは比較的お金がかかる競技である。ボールは一個数万円で、競技としてちゃんとやろうと思えば特製の違うボールを何個も用意しないといけない。しかも消耗品なので定期的に入れ替えなければならない。他にもシューズやバッグといったものや、テープのような小道具類が必要になる。もちろん練習に必要なゲーム代もたくさん必要。その辺の学校の部活に比べると年間で必要な予算は割と大きい。
こんな感じなので親の理解を得られずして競技を始めることは不可能だし、だいたいジュニアボウラーの親もボウリングを競技としてやっている事例が大半である。
これは裏を返せばボウリングに理解のある親しか子供にボウリングをやらせないということだ。もともとボウリングに理解があるから、道具代も出すし、JBCの入会の仕方も会費も知っているから明示する必要性もないし、親御さんのしつけのおかげで別にルールやマナーなんかをイチから誰かが教育する必要もない。
なるほど、これではいろんなものを明示化する必要性がないわけだ。親から子へ、または仲間内へ自動的に暗黙知として共有されるわけだから、わざわざ労力をかける必要性を彼らは感じていないのだろう。ゆえに「身内のお遊戯会」みたいな状況から全く抜け出せないどころか、抜け出す気などハナからないという状況になるのも頷ける。

新しいパトロンをつくることが実際は重要

「ジュニアをたくさん育てれば、ボウリング業界が活気付く」なんてことを無邪気に信じている業界関係者がいる。確かに子供の頃から囲い込んでおけば、大人になっても続けてくれるだろうという魂胆である。しかし、先ほども説明したようにジュニアの育成には親の協力なしには成り立たないのである。
なにぶん少子高齢化の時代である。2018年の特殊合計出生率は1.42人と人口減まっしぐらのこのご時世である。当然ながらボウリングをやっている親が産む子供の数も減ってきているわけで、次世代のジュニアボウラーの参入数も今までの身内で回すだけのやり方ではどんどん減っていくことは目に見えている。
もっともせっかく育てたジュニアボウラーだって進学や就職で地元を離れていくことはよくあることであることを考えると必ずしもジュニアボウラーを育てることだけが安泰とは言えない。特に再三言っているようにボウリングを自前で競技としてやるにはそれなりにお金が必要なので、ある程度裕福なうちの子が多い*1。裕福なうちの子であれば進学のため高校卒業と同時に地元を離れることが多く、就職で戻ってくる可能性も低い*2わけなので、実際の投資としてのパフォーマンスとしては甚だ疑問である。
であれば今までボウリングにはあまり縁のない家庭環境で育った子供を取り込まないと先細りになっていくわけだが、子供を取り込むためにはまず親の理解を得ないといけない。子供にボウリングをやらせるのに必要なのは子供の意欲や興味ではなく親の金である。親の財布なしには子供のスポーツは成り立たないものなのだ。だからこそ親を巻き込まなくてはいけない。

親ごと沼にしずめるための準備として

単にお金を出させるだけよりも、なんだかんだでこれが効くと思う。ボウリングに対する理解を得るには実際に親にも遊んでもらうのが一番だろう。ある程度ボウリングに触れやすい家庭環境の存在による影響は決して小さくはないはずだ。
とはいえ大人になってからボウリングを始め、きちんと習うことができる環境は少ない。「若者の習い事」としてボウリングが習える環境を整備しているところは案外少なく、せいぜい年寄りや主婦層向けの「健康ボウリング教室」が関の山である。
これは学生にとっても同じことでボウリング部がある学校の方が稀なので、ボウリング部がない環境になってしまうとまず習い事として触れる環境がない。もっとも部活は部活でめんどくさいところがあるので、個人の気軽な習い事としてやれる環境は学生でもあまりないように思う。
何度も繰り返し言っていることだが、ボウリングの世界は開かれていない。ボウリング場の客は、少数の国体等を目指す「内輪のお遊戯会」と年数回仲間内でハウスボールをサムレスで転がすような「輩」の二極化しており、その二種類の客は根本的に交わらないのである*3。この中間層がほとんどいないのである。
全くボウリングしない層よりかは、年に数回でもボウリングに行く層の方がボウリング沼に沈んでくれる可能性は高い。年に数回来る層から、月数回来る層になり、シューズを買い、ボールを買い……と沼に沈んで欲しいのであるが、それをやるための土壌がほとんどない。沼への入り口は厳重に秘匿されているので、沼に立ち入ることができないのである。
そうこうしているうちにライフステージがどんどん代わり、ボウリングとは全くご縁のない親ができあがるという仕組みだ。新規の顧客をつかむチャンスを逃しているのはボウリング場側なのだ。

若い人を対象としたプロによるボウリング教室を

程よくボウリングをやりたい若い人のためのボウリング教室の潜在的な需要は大きいと思う。これまで実施てうまくいかなかったのであれば、単純に情報伝達の方法に問題がある*4とか、時間帯が限られすぎていて参加できない*5という問題があったからであろう。それ以前にコーチがイマドキのボウリングを全く理解していないという能力的な問題もあるかもしれない。
その辺は今時の若い人にあわせた事業の組み方をする必要があるであろう。平日の昼間はなかなか時間が取れない層に対してレッスンが受けられるように、夜にレッスンの時間を設けるとかしてもいいし、土日の夜にレッスンの時間を設けても良いかもしれない。そもそも学業や仕事をほっぽらかさないと参加できない時間帯にイベントをやられても参加できないのである。
コーチに関してはジュニアから一貫して担当できる人がいい。これは教室の参加者のライフステージが進んで子供にもボウリングをやらせたいと考えた時に誰に預けるかを考えれば明白である。子供の財布である親と最初から良好な関係が出来上がっていることはかけがえのない財産である。
若い人への投資というのは決して業界としては無駄な行為ではない。次の世代を取り込んでいくための種まきとして継続的して行わなければいけない事業である。

まとめ

業界の縮小を止めるためにも若い人の取り込みは必須である。若い人を増やすためにもジュニア選手上がり以外への層へのアプローチが大切であるが、その受け皿は地域によっては現在皆無に等しい。
多様なルートから継続して新規の顧客がつくことが新たな顧客の定着につながると考えている。これまでの「内輪のお遊戯会」であるJBC、NBF、その他クラブ以外のルートを確保しておかないとハウスボールからステップアップした人を取り込む場所がないからだ。取り込む場所がなければ居つくことも難しいであろう。
新たな親世代をしっかり繋ぎとめておくことは、この多様な娯楽に溢れた時代において、次世代の子供をつなぎとめるための強力な手段の一つになると考えている。厳しい状況であるのは重々承知しているが、これから先に向かって倍プッシュで投資を行って生き延びるか、ボウリングブームを支えたあの頃の若人たちと一緒に土に還るかの分岐点にあると思う。
もう少しこれから業界に踏踏み入れた若い人たちがちゃんと食えるように業界全体で投資を行っても良いのではないかと思う昨今である*6

*1:だいたい今は無き万代シルバーボールのジュニアの子なんか、医師会のボウリング部の関係者の子供ばっかりだ。(個人の偏見も少し入っています)

*2:地元に仕事がないんだもん。仕方ないじゃない。

*3:この辺りはぶっちゃけ「内輪のお遊戯会」サイドに問題があると僕は断言する。ルールに書いていないことをさも当然のように人に求めるのはどうかと思う。牽制とか牽制とか牽制とか etc

*4:e.g. 場内の掲示物でしか情報伝達をしていないとか

*5:e.g. 毎月第三土曜日の夕方のみ開催とか

*6:もっともその若人たちにこういった視点があるかは話は別である