プロテスト所感

f:id:hijiritakamine:20180722195229j:plain
疑惑の目しかなかったプロテスト2次試験が終了しました。
通過した皆様、おめでとうございます。
残念ながら不合格だった皆様、お疲れ様でした。

問題点の整理

  1. 今年のプロテストのメンバーは近年稀に見る豪華な顔ぶれ
  2. 例年の難易度で普通に考えれば余裕で通るであろう人たちがめちゃくちゃ苦しんでいる
  3. 例年よりも故意に難易度をあげて合格者数を絞ってるんじゃないのか? or
    特定の人を落とすため*1にわざと難易度をあげているんじゃないのか? etc
    といった疑惑

ザックリまとめるとこういう感じでしょうか?
もちろん日本プロボウリング協会(以下、JPBAと表記)側がこの疑惑に対して何かコメントをしたということはなくあくまでも噂にすぎません。
「喉元過ぎればなんとやら作戦」でだんまりを決め込んでいるのかはわかりませんが、疑惑を否定するコメントがない時点で限りなく黒に近い何かなのではないか? と疑われても仕方のないと思います。

ボウリングのスコアを操作することは可能か?

全くボウリングをご存知でない方のために改めて説明しますと得点を操作することは可能です。
特にプロテストを受験するようなトップクラスのプレイヤーは自爆することがほぼないので容易に操作ができると考えても過言ではないでしょう。

まずレーンの上には、レーンの保護のためにオイルがひかれています。
オイルの厚いところでは摩擦はないのでボールは回転の方向にかかわらずまっすぐ進行方向に進みます。一方でオイルの薄いところやオイルがほとんどないところではボールとレーンの摩擦によりボールはボールの回転方向へと進もうとします。

ボールを曲げるのに必要なものに「回転数」や「回転軸の方向」といった話も大事なのですが、そもそもボールとレーンの摩擦がない時点でボールは曲がりません。
摩擦の変化はレーン上に塗布したオイルの量で調整できます。したがって曲がりやすいゾーンと曲がりにくいゾーンを故意に作ることができます。曲がりやすいゾーン、曲がりにくいゾーンをどう作るかによって、スコアは簡単に操作できます。

f:id:hijiritakamine:20210514115227j:plain
簡単なオイルパターンの例(Kegel EASY STREET)

オイルがどのように塗布されているのかというのを専門用語で「オイルパターン」といいます。
これはとても簡単とされるオイルパターンの一例です。
青く塗っているところがオイルが塗ってあるところで青色の濃さがそのままオイルがたくさん塗ってあるところです。こちらの図表ではレーンの真ん中の方にたくさんオイルが塗ってあって、ガターに近いところではあまりオイルが塗られていないことがわかります。

このようなレーンではミスの許容範囲が大きくなります。
f:id:hijiritakamine:20210524223503p:plain
緑のラインをストライクのラインと仮定した場合、ガターの方向にミスした場合(赤い線)手前からボールが曲がり始めることで最終的にミスしていない時と同じところでピンに当たります。
また、レーン中央の方向にミスした場合(黄色い線)ではボールが奥の方に行かないと曲がらないのでボールの曲がる量は小さくなります。その結果、ボールはミスをしていない時と同じところでピンにあたります。
これはものすごく極端な例ですが、多くのボウリング場では普段からそうなるようにオイルが引かれています。ボールを曲げると有利なのは単にポケットへ*2の入射角が増えてストライクが出やすくなるだけではなく、ポケットにボールが行きやすいというメリットがあります。優しいオイルパターンというのはつまるところミスに対する許容範囲がものすごく大きいオイルパターンであると言っても過言ではありません。

f:id:hijiritakamine:20210514115342j:plain
難しいオイルパターンの例(Kegel WINDING ROAD

一方このように難しいオイルパターンだと話は変わってきます。
先ほどの簡単なオイルパターンとは違い、オイルの濃淡の差が少ないので、右の方にミスをすれば右の方にボールが行きますし、左にミスをすれば左に行きます。
レーンがミスをカバーしてくれないので、難しいパターンと呼ばれます。

この簡単なパターンと難しいパターンでは一般にアベレージが10から30点違うと一般にいわれています。
アメリカのボウリング団体であるUnited States Bowling Congressのチャート*3では先ほどの簡単な方のオイルパターンにおけるアベレージ220点は難しいオイルパターンにおける190点に相当するとされています。
そのくらいオイルの分布状況は点数に大きく影響します。

本当の合格基準はアベレージ200点じゃない疑惑

さて、このようにアベレージというのは主催者側でコントロール自由自在とまでは行かなくてもある程度操作はできるわけです。つまり、「ちょっと会員増やしたいなー」とか「最近、退会者が増えてきて財政が厳しいからちょっと会員増やしたりして収入を稼ぐか」と思えば難易度を下げ、「ちょっと会員多すぎるから絞るわー」とか「あの受験者を合格させたくないけど、表立って受けさせないと波風がたつからなんとか実技で不合格にしたい」と思えば難易度をあげるということができてしまいます。

もっとも、受験資格には5年以上在籍しているプロボウラー2名からの推薦状が必要な団体です。その推薦状を出すからには簡単なコンディションで最低アベレージで200点ぐらいは打てるでしょうから、難易度を下げれば問題なく基準は突破できるはずです*4

難易度は非公開である以上そこの調整はいくらでもできるし、あとからどうとでも主催としては言い訳できます。
外野がどうこう言おうが知ったこっちゃないし、受験生は推薦状をもらっている以上は表立って批判はできません。仮に表立って批判したとしても3次試験の面接で落とすなり、来年以降の受験資格を認めなければいいだけのことです。

建前としての合格基準は1次試験、2次試験の実技でのアベレージ200点ですが、本当は裏の条件として「今年は半分ぐらい落としたいから難易度を上げよう」とか「今年は特定の選手を通さないといけないから難易度を下げよう」ということがあるのではないかと疑いの目で見てしまうわけです。

スポーツとしての公平さの問題である

さて、本来であれば他団体の入団試験にごちゃごちゃ外野が口を出すのは筋違いです。それは認めます。
しかし、一方でJPBAは日本を代表するプロのボウリングの団体であり、公益社団法人という『公益』を目的としている事業を行っている団体であることも事実です。
実際はともかくとして、『表向きの合格基準とは別に裏の合格基準があり、裏の合格基準を満たすようにいろいろ裏で操作が行われている疑惑が拭えない入団試験をやっている団体』が果たして公益性にかなっていると言えるのでしょうか? また、そういったことが公然と行われている疑惑を否定することができない状況が本当にスポーツとして健全で公平性があると言えるのでしょうか?
今年のプロテストはなんか「もやっ」とさせられる内容でした。

f:id:hijiritakamine:20210525204032j:plain
「で、実際のところはどうなんですか?」

*1:特にLBOからの再受験組?

*2:右投げでいうところの一番前のピンとその横のピンの間

*3:http://usbcongress.http.internapcdn.net/usbcongress/bowl/sportbowling/pdfs/SportChallengeStandardConversion.pdf

*4:さすがに絵に描いたようなハウスショットで爆死はないよな、な