命題:バーチャルYouTuberとは何か? 説明せよ

命題:バーチャルYouTuberとは何か? 説明せよ
1)ただし、説明する相手はこういう文化に全く馴染みのない層を対象とする
2)なお、説明を受けた相手がヲタク特有の早口でドン引きさせた場合、失格とする

長いので(続きを読む)行きにします。

VTuberは一人の主体性を持った人間なのかという話

例の松戸の事案でバーチャルYouTuber(以下VTuber)側を擁護する側の意見として、VTuber側を「人」として扱っているヲタクが思ったよりも多いことに驚いた。「VTuberを人格を備えた自然人のタレントと同等の存在として扱うのはさすがに無理がないかい?」と個人的には思うのだが、どうもそうではない人が思ったよりも多いなという印象。
個人的にはVTuberを自然人として扱うことには基本的に違和感を感じている。あくまでも「バーチャル」な存在であり、いわゆる中の人とは基本的に切り離された存在であると考えている。あくまでもVTuberはバーチャル空間のキャラクター、現実の中の人は中の人という感覚。
特に商業色が強くなればなるほど「キャラクターこそがVTuberの本体」という「キャラクタービジネス」であると考えた方が個人的にしっくりくるからに他ならない。

そもそもVTuberとは?

静岡大学学術院情報学領域の原田伸一朗先生の「バーチャルYouTuberの人格権・著作者人格権・実演家人格権*1」の中で

 実際にVTuber動画群を視聴すると、一口にVTuberと言っても、その存在様式・活動スタイルは多様であることが分かる。あえて単純に二極化して捉えれば、①あくまで生身の人間(YouTuber)がキャラクター・アバターの表象(「ガワ」とも呼ばれる)をまとって/借りて動画配信をおこなっているタイプと、②キャラクターこそがVTuberの本体であって、生身の人
間がその背後にいてキャラクターを操作しているわけではない(いわゆる「中の人」はいない)という設定(あくまで建前ではあろうが)を遵守するタイプとがある。

と述べているように大きく分けて「あくまで生身の人間がガワを着て配信を行っているもの」と「(建前として)キャラクターが配信を行っているもの」の二通りの配信スタイルがある。実際は単純に二極化しているわけではなくスペクトラムのようになっているというのが実態に近いのかもしれない。
VTuber = 一人の主体性のある個人」とは必ずしもすべてのVTuberに当てはまるとは限らない。特に「キャラクターがVTuberの本体」という立場に近くなればなるほど、キャラクターが主体であり、キャラクターに沿った形で中の人もキャラクターを即興で演じていくというスタイルになる。そこまで行くとキャラクターを創作し、それを演じているのとなんら変わりはない。なのでVTuberが一人の主体性を持った人間であるとは、すべてのVTuberに対して当てはまるとは言えない。
「あくまで生身の人間がガワを着て配信」の例はおぎの稔(おぎのみのる)大田区区議のおぎの稔(おぎのみのり)*2があげられるだろう。これはおぎの議員ありきの、おぎの議員の延長上にあるものとして扱って差し支えないだろうから「おぎの議員が主体」だし、おぎの稔(おぎのみのり)を通じておぎの稔(おぎのみのる)を我々は見ているといっても過言ではないだろう。
一方、「キャラクターこそがVTuberの本体」のわかりやすい例が「ぱかチューブっ!*3」のゴルシちゃんだと思う。言うまでもなくウマ娘ゴールドシップ非実在の人物だ。中の人は(多分だいたいアドリブで)演じているが、ウマ娘ゴールドシップのキャラクターからは大きく外れないように意識はしているだろう。あくまでも「ぱかチューブっ!」のゴルシちゃんはゴルシちゃんが主体であって決して上田瞳ではない。我々は上田瞳ではなくゴルシちゃんを「ぱかチューブっ!」で見ているのである。

VTuberは基本キャラクタービジネスだ

商業色の強いVTuberはある種の「キャラクタービジネス」であると考えた方が個人的にしっくりくるのは、「キャラクターこそがVTuberの本体」だからに他ならない。「にじさんじ」であれば、VTuber月ノ美兎や静凛といった「キャラクター」を見たいわけで、別に中の人を見たいわけではない。
だから基本的に商業のVTuberは基本キャラクター商材という考え方で、リアルなタレントとして扱われることにぶっちゃけ違和感しかない。多分これはVTuberに馴染みのない層になればなるほど同様の感覚だと思う。
「戸定梨香という VTuber(アニメキャラクター)は、(以下略)」というフェミ議連の抗議書にもあるように、こういうものに馴染みのない一般の人にとってああいう二次元の絵は静止画であれば「まんが」、動けば「アニメ」なのである。人間の興味のない対象の扱いなんてそんなものである。僕だってイタリア料理のパンとパスタの役割の違いなんてあまり気にしないし、4℃のアクセサリーと他のアクセサリーの違いなんてわからないし、ぶっちゃけどれも興味がないし多分今後も気にすることはないだろう。
だからこそ、こういったものに興味がない層からすれば、そこはどうあがいてもVTuberは「まんが」であり「アニメ」的な何かから扱いが変わることは一生ないと思われる。どちらが現実世界のマジョリティかと聞かれれば興味のない層の方が主流な訳で、興味のない層からすれば動く二次元の絵は「まんが」であり「アニメ」であるので一人の主体性を持った人間として扱うには世の中がついてこないのではないかと考えている。
なのでVTuberとは何かと冒頭のように聞かれれば「ハローキティのような何かです」と説明しておくのが特に商業色の強いVTuberを説明するには一番理解してもらいやすい一般向けの説明だと思っている。

個人的に一番危惧していること

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「あー、なんかよくわからないことを言う人たちが喧嘩していますね」
「どっちも頭がおかしい人たちだから近づかないようにするんだ」
となっちゃうのが落とし所として最悪だと思っている。
どっちも「気持ち悪い人たち」として一般から扱われないように慎重に立ち回ることが求められているのではなかろうか? と個人的には思います。はい。