まるかど企画『おクチが裂けても言えないの』感想(ネタバレあり)

無事に千秋楽も終わったようで、これでようやくネタバレ全開でお話ができる。 ということで徒然書いていきます。

長くなるので続きを読むから読んでください。
本当、”生きづらい人”というのをうまく暗喩しながらもテーマとして綺麗に落とし込んだなと思う作品でした。
ヒロインその1の有栖川姫子演じるくちさけは口がさけていることと中身が残念なことを除けば、(多分)普通の感覚的にアラサーぐらいの女性です。人間の男と結婚して口がさけていない子供を産むことが目標ですが、口が裂けていることと持ち前の圧倒的残念さでいつも失敗ばかりということでなかなかうまく生きません。
一方、ヒロインその2のこじらせ女子椿(演:長島光那)は美人で頭もよくで理想の女の子的な娘に見えます。長島さんがショートカットにしていることもありちょっとボーイッシュに見えるところがまた綺麗なかわいい女の子感をより一層引き出しているように見えます。
しかし、8年間の*1積もりに積もった想いは彼女をバケモノにするには十分な期間でした。ただのスタイストのアシスタントの綺麗な女の子から徐々にメッキが剥がれてきて、ヤンデレヒロインへと化けていく様は長島光那さんのキレた……を通り越したイカれた演技が本当にすごく「マジで人殺すんじゃないか」と思ったくらい。お芝居だとわかっていてもそれを感じさせないあたり本当これはヤベー役者だなぁと思いました。
あとは妖怪たちがいっぱい出てくるわけですが、それぞれが”生き辛い何か”を抱えた人の暗喩のように思えます。社会に出てうまくやっている妖怪もいれば、そうでない妖怪もいます。まさかこいつが妖怪ではないだろうと思った人が実は妖怪だったなんてこともあります。
”生き辛い何か”を抱えた人は実は大勢いてそういう人たちはなんとか折り合いをつけて生きている。それは案外妖怪には見えない彼女かもしれないというテーマが非常に丁寧かつ綺麗に描かれているストーリーでした。

*1:始まりのきっかけの描写が特にないので多分それ以上だとは思いますが。入学した時からと考えると11年?